空調電力削減システム「エネデュース」

エネデュースとエコテック

「メンテナンス」でつながったパートナー

ホームメンテナンス市場への進出

ロシアで出会った新技術からエンジン用修復剤を製品化し、その後、国内での原料合成に成功。カーエアコン用修復剤の技術を応用し、一般のエアコン用修復剤を製品化するまでは比較的スムーズでした(詳細は「開発ストーリー」をご覧ください)

しかし、お客様が買いに来てくれるカー用品と、こちらから施工に伺うホームメンテナンス用品とでは、マーケットが大きく異なります。これまでのネットワークを駆使し、家電メーカーや家事サービス会社などの事業パートナーを探していきました。

新規性の高い技術や製品に対する人の反応は、2種類あります。1つは警戒し、不安ばかりが先行するパターン。もう1つがおもしろがり、取り入れてみようと考えるパターンです。
エネデュースはこれまで世の中に存在しなかったテクノロジーであり、声をかけた企業の9割は「機械が壊れるのではないか」とネガティブな反応でした。
そうした中、「これはおもしろい、やってみよう」と真っ先に手を挙げてくれたのが株式会社エコテックです。彼らはUVフロアコーティングという独自技術をもとに、全国の個人宅や企業における長年の施工実績があり、技術はあっても販売チャネルを持たない私にとって理想的なパートナーでした。
そして2011年5月、エコテック本社で初回打ち合わせを行い、技術開発会社とホームメンテナンス会社による異業種コラボレーションが実現したのです。

見直される「メンテナンス」の文化に向けて

海外の優れた技術の紹介・斡旋などを主とする仕事柄、私のところに持ち込まれる案件は、その業界内もしくは世界において、これまで存在しなかった新しいものが数多くあります。かつて製品開発に参加したソニーの初代ウォークマン、キャノンのデジタルカメラの基礎となる「キャノンT90」はまさにその代表例といえるでしょう。
このような新規性のある製品や技術の開発に取り組む際、私が心がけているのが、「単なる技術開発ではなく、その製品をとりまく文化やコミュニケーションまでをも開発する」ということ。
そのためには、過去から現在までの歴史の流れの中に未来へのヒントを見出す、いわば「時代を見る眼」を持つことが不可欠であると考えています。
機能性の向上だけを追求する時代は終わりを告げ、それが人々の生活の中にどのような価値や変化をもたらすのかが重要視される時代になりました。このような時代の流れを背景に、私がいま、注目するのは「メンテナンス」の文化です。
ジュエリーや時計、自動車などさまざまな分野で、良いものを大切に手入れし、長く使い続けるという価値観が主流となりつつあります。そこには経済的なメリットはもちろんのこと、メンテナンスという行為自体への楽しさや喜びがあふれているようです。
エネデュースは、古くなったエアコンを買い替えるのではなく、手入れして性能を回復させるメンテナンスです。エネデュース以外にエコテックが取り扱うUVフロアコーティングやウレタンコーティングも、大切な家を守る、まさにこのメンテナンス・テクノロジーの集大成。エネデュースとエコテックは、「メンテナンス」をキーワードにつながっているのです。

エコテックと協働し、国内外で検証実験をスタート

技術パートナー探しの際、安全性の証明が何よりも重視された経験から、「派手な宣伝文句を考えるより、事実に基づいたデータを集めること」が私たちの共通意識となりました。
2011年8月にJET(一般財団法人電気安全環境研究所)における性能試験を実施、そこでエアコン性能の向上、安全性等を実証した後、翌月にはエコテック本社屋でも性能試験を行いました。
以降、2015年現在までに国内外で実施した性能試験は優に100を超え、ほぼすべての事例でエアコンの性能向上による省電力効果が確認されました。
2012年1月、エコテックのメンバーとともに中国・広州市の視察およびプレゼンテーションを行い、同年5月には香港、9月にはシンガポールを訪れました。目的は、アジア圏におけるマーケットの確認と、赤道ベルト地帯の空調の現状把握です。
年間およそ5千万台のエアコンが売れる中国を始め、成長著しいアジア圏への進出はエネデュース市場展開の柱の一つです。中国ではビル一棟をまるごと管理するセントラル空調が一般的で個別空調や冷凍倉庫などに導入の余地があることを学び、香港では世界的な技術コンサルタント会社「ARUP H.K」、シンガポールではセブン-イレブンやスターバックスを展開する流通大手の「Dairy Farm」等との強力なネットワークを得ることができました。
国内でも、私たちの技術と活動が日経新聞や専門誌に取り上げられることが増え、大手メーカーで技術説明会を開催するようになりました。流通大手もエネデュースに強い興味を示し、プレゼンテーションを行う機会が得られるようになりました。
この頃には性能試験の手法が確立し、エコテックのメンバーによる地道なデータ蓄積のおかげで、どんな業種でもそれに見合った検証データを提示することが可能になりました。
眉唾ものも多い省エネビジネスの中で、大手メーカーの信頼を獲得できたのは、まさにこうした努力の結晶であるといえます。

エネルギー大量消費社会の到来に備えて

エネルギーのテクノロジーは非常に複雑ですが、その成果は一目瞭然です。エアコン室外機に薬剤を導入すれば、数分でノイズがおさまり、スムーズに目標温度に到達します。
性能があがったぶん消費電力が抑えられ、電気代の削減だけでなくエアコンの買い替え時期を延ばすなどの経済的効果が得られます。
しかし、それ以上に重要なのが、今後、確実に到来するであろうエネルギー大量消費社会への備えです。私たちがいまの暮らしを続けると、2030年には地球2つ分の資源が必要になると言われています。すべての人が平等に快適な生活を享受するためにも、省エネルギーは目をそらすことのできない課題です。
エネデュースによる省電力がその解決の一助となることを確信し、私たちはこれからも歩み続けます。